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【書評】 カードマジック事典 高木重朗 編 (東京堂出版 1983年) 

1983年という発刊当時には、もちろんインターネットも無くDVDも無く、マジックのテクニックを習得するには書籍が中心。


それがマニアを自称する者であれば、その源を洋書に頼るというのがエリート・アマチュア・マジシャンの証という時代でした。

国内には、テンヨーの「マジック・スクール」、力書房の「奇術研究」などのマニア向け定期刊行物もありましたが、カードマジックのジャンルに絞って、基礎テクニックや応用作品をこれだけ網羅した本書の登場は、マニアにとってセンセーショナルな出来事だったと記憶しています。

著者はアマチュアマジック界の重鎮、故・高木重朗(たかぎしげお)先生で、この書の発行はやはりこの方をもってして初めて実現されたものだと思います。

351ページが網羅しているのは、80以上の技法と、200に及ぶマジック作品で、正にENCYCLOPEDIA(事典)と呼ぶに相応しく、この内容をすべて習得できれば一流のカードマジシャンと言ってよいでしょう。


現在、ジョーダン・カウントと呼んでいるのを「ヨルダン・カウント」、ファロー・シャフルが「ファイロ・シャフル」などと訳されているのも、英訳情報が少なかった時代を感じさせます。

解説本のしての「分かり易さ」という観点からいえば、10点満点で5点以下でしょう。

必要最低限のことしか書いてありません。

だからこそ、これだけ多くの技法と作品が紹介できるわけです。またマニアにとっては、細かい説明よりもその原理を理解したうえで創意工夫し、練習を繰り返し、自分のものにしていく、というストイックさに満足と自尊心があるわけで、5点の解説を読んで10点分を理解する苦しみと楽しみにを与えてくれる教材だと思います。

但し、この時代に日本に紹介されているテクニックの一部には未だ洗練されていないものもあり、カード・テクニックがより自然な形で体系づけて一般に広く紹介されるには、1992年にテンヨーから出版された「(新版)ラリー・ジェニングスのカードマジック入門」を待つことになります。

ここであえて「一般に広く」と表現しましたが、やはりマジック・マニアの世界の話なので、一般書店の「趣味・ゲーム」コーナーに陳列してあるほどのポピュラーさのことではありません。

実は、「ラリージェニングのカードマジック入門」のオリジナルは、昭和47年(1972年)にテンヨーから発売されており、この時点ではより限られたマニア層に向けて出版された経緯があるからです。

カード・マジックを初めて学ぼうとする人が、「正しい知識とテクニック」を身につける意図であれば、カード・マジック入門、技法と作品の原理をより多く知りたいというのであれば、カード・マジック事典に行きつくと思います。

カード・マジック事典の方は、料理で言えばレシピ・カード(料理の材料と作り方が簡単に書かれているメモ)の様な存在ではないでしょうか。


Harryの独断と偏見による評価(5点満点)

紹介されている技法・作品の数    ★★★★★

紹介されている技法・作品の応用性 ★★★★★

紹介されている作品の斬新さ     ★★★★☆

解説の分かり易さ            ★★☆☆☆

 

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