昨年8月のメルマガに、昔々「奇術研究」に載っていた厚川昌男(知る人ぞ知る、泡坂妻夫)先生のちょっとしたジョークテクニックを紹介しました。
カードマジックとは呼べないかもしれませんが、ウィットに富んでいて、私はこういうアイデアが大好きです。
何人の読者の方が演じられたかわかりませんが、私自身は少なくとも10年以上は人に試してみたことが無いものでした。
ところが、先日マニアの友人と酒を飲んだ時のこと。
一通り腹が満たされて、肴の皿も空き始めたころ、彼がおもむろにポケットからカードを取り出して、いつものカードマジック談義に入ろうとした時に、ちょっと悪戯心が湧いてこんなことを言ってみたんです。
「そういえばさ、ね、そのカードいつごろ買った? え、半年前? ふーん、それじゃ関係ないかな? 念のためちょっと見せてもらっていい?」・・・・と。 かなり真面目な顔で、ですよ。
で、このジョークを演じたんです。
ちょっと細かい手順を補足すると。
1. デックを借りたらディーリングポジションからカードを5枚ほど押し出してファン状のまま右手に渡す。右手は軽く開いた5枚のカードを保持する。
2. そこで、左手のデックを細かく調べるように目の高さから、さらに照明に少しでも近づくように上にあげて(ちょうど紙幣のスカシを確認するような形)、よく裏模様を調べている様なしぐさをする。・・・と同時に右手は右足腿の上に自然に下げ、5枚のカードをもった右手はテーブルの下に隠れる。
3. 左手のデックのトップの裏模様を調べながら、「あ、あったあった。結構簡単に発見しちゃったよぉ」と言い、これをミスディレクションとして、テーブルに隠れた腿の上で右手の人差指と中指で5枚のうち一番下のカードを90度回転させてしまう。
4. 「知ってた?この噂。」と、相手の方を見ながら左手のデックも左腿の上に下げ、すぐにその上に右手の5枚を重ねる(この一瞬はテーブルの下に隠れての仕事。即セットされたデック(上の4枚がファン状に広げられたデックの姿)を両手で保持し、テーブルの上に出す。
あとは、映像の通りです。
この1~4までの手順は本当に即興で行ったのですが、自分でも驚くくらい、スムーズにセットが完了しました。
後日聞いたら、友人は僕がかなり真面目に話を切り出したので、何かの演技だとはまるで思わなかったそうです。(酔っぱらっていたからというのが本当の理由だと思うのですが・・・)
あとは、相手はオカシイと気づくまで、しゃべり倒しました。逆に、気付かせたくて、しゃべったのですが・・まぁ~、よくもあんなに出まかせが言えたものだと自己嫌悪になるくらい。
「半年くらい前っていうと、えっ、8月ごろ? じゃ、当たりだよ。アメリカで6月の生産ロットだって話だもん。」
「これで見つけたの3つめ。」「僕も家でひとつ見つけた」
「USプレイング社のホームページにお詫びが載ってる」「トリックカードの製造工程にあったものが混入したとかいう噂」
「ヤフオクで5000円くらいの値がついているみたい」、などなど、などなど、などなど。
ところが・・・これだけワザとらしく話してもジョークだって気付かないんですよ。
それどころか、彼がビールを飲み干すために顔を上にあげた一瞬にサッとデックを閉じてしまい(もちろん例の90度横になったカードを戻して)、彼の前にデックを返すと、
彼は「おお、いいこと教えてくれてありがとう!」と、そのデックを至極丁寧に取り上げて、そのまま丁寧にケースに戻したんです(ヤフオク行きかぁ~・・・爆)
もう、お腹抱えて笑いたい気持ちを抑えて、まだバラさずにいました。
普通自分の手で、その一枚をとってみて確認しますよねぇ~(笑) やっぱり酒のせいですよ。
で、ジョークにならないままカードがしまわれたことで、僕の悪戯心にさらに火が点き、「そうだなぁ、汚すともったいないからな。今日はこっち使いなよ」って僕のカードを貸したんですよ。(普段はマニア同士、自分のカードは滅多に人には使わせません)
結局その夜はそれでお開き。
帰宅してからも思い出し笑いしてしまった次第です。
翌日、彼から携帯に電話。「なぁ、昨日は結構飲んでたけど、お前、なんか、カードのミスプリの話をしてたよな。あれ何のカードだった? さっきから探しているんだけど見つからないんだよ。」
「え~、確かにあったぞ~、落としたんじゃないか?」とさらにかつごうとも思いましたが、この辺でネタばらし。友達失くしちゃまずいですからね。
しかし、あれだけ騙されるかぁ~? 本当に不思議、楽し、の経験でした。