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文献の価値、映像の価値

メルマガに紹介する作品を追い求めて、「カードマジック事典」に代表される東京堂出版の書籍の数々、テンヨーの小冊子「まじっく・すくーる」、加藤英夫師の「ふしぎなあーと」、

力書房の「奇術研究」、昔々、丸善に大枚を叩いて手に入れた洋書や海外出張の折にマジックショップで購入した洋書など・・・、

最近文献をひもとくことが多いのですが、文章によるテクニックと演技の伝承の難しさと、その価値を痛感しています。

DVD教材の普及によって、マジック技術の伝承は昔に比べると易しくなりました。

それは同時に、伝える側と伝えられる側の情報の誤差が少なくなったこと、すなわちマジックを習得しようとする人々にとって、悩み、想像力、創意工夫の機会が激減したことに他なりません。

あの複雑なテクニックや、繊細な演技力を文章で伝えるには限界があると思います。

その限界と、実際に習得するレベルのギャップを、マジシャンを志すものは覚悟して自分の力で学んできたのだと思います。

おそらく、歌舞伎、落語、能、狂言、といった伝統芸能も、習う側にとっては明らかにビジュアライズされたお手本があるわけではなく、師匠の口頭伝授によってその完成を頭の中にイメージし、その姿に向かって技を精進していく、というやり方で一人前の域に達することができる世界なのではないかと思います。

マジックの場合、文献は間違いなく師匠の役割を担います。

文献が提供する「未完な情報」を自らが埋めていくことで、マジックに対する創造性、発想力、独創性が養われるのだと思います。

では、DVDでは駄目なのか? 映像に溢れかえった当サイトは邪道なのか?

けっしてそうではないと思います。

文献を読み下すことの限界に突き当たってマジックへの情熱を失ってしまうくらいなら、先ずは現象の素晴らしさを脳裏に焼き付け、その魔法を自分の手で再現するのだ、というモチベーション作りには最適です。

昔、ピアノを習わされました。大昔です。ピアノの先生は「バイエル」という教則本を前に、あれやこれやと鍵盤と小さな指との格闘を迫ります。

正直、嫌になりました。 半年でギブアップです・・・ピアノを習うには少々遅い小学校3年生でした。

中学にあがってピアノが上手い友人ができました。 彼がどうしてピアノを練習してこられたかという話を聞きました。

彼のお母さんがピアノの名曲を沢山聞かせてくれたそうです。 クラシックだけでなく。

それで「あぁ、こんな素敵な曲を自分でも弾けたら、どんなに素晴らしいだろう」と思ってレッスンを続けたそうです。

文献という自分の想像力を高める素材と、映像というモチベーションを高める素材を、自分なりに上手に両立させていくことが、とても大切だと痛感している今日この頃です。

 

今、メルマガでパケット・トリックについての連載をしているのですが、次回にダイ・ヴァーノンのセブン・カード・モンテをとりあげようと、ヴァーノン・ブックの名で知られる「The Vernon Book of Magic」の第8章を読んでみて、つくづくそう思います。 

この文章を読んだマジシャンは自分なりの手順を創作したくなるでしょうね。

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